なぜ商標制度は「商標の創作性」を認めないのか

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日本の商標制度は便乗をある程度許容している

日本の商標制度では商標は「創作物」ではなく、無数にある言葉や図形の中から選び取った「選択物」である、とされています。デザイナーが考えたロゴや、コピーライターが考えたキャッチフレーズであっても、それらは日本の商標制度上では「創作物」としては扱われません。

具体的にはどういうことかというと、他人が考えたフレーズや他人が著名にしたフレーズに便乗して商標登録することは、日本の商標法上は一定範囲で許容されているということです。最近だとフレーズとしては著名だが商標としては著名であることを任天堂が異議申し立ての中で立証できなかった【マリカー】や、「フランク・ミュラー」のパロディ商標であったものの価格帯の違いから混同は生じないと判断された【フランク三浦】が有名な例1です。

創作性を認めない理由

ロゴやキャッチフレーズは専門家に対価を支払って製作を依頼するものですから、それ自体に立派な財産的価値があると言えます。ですから著作権2や特許と同じように、商標としても一定の創作性を認めた方が便乗を防ぐことにも繋がるように思えます。

ですが、日本の商標制度では商標を「創作物」として認めていません。それはなぜでしょうか?下記に述べる理由が考えられます。

創作物の保護には期間の制限がある

まず前提として、創作物(デザイン、絵画、音楽、発明、プログラムなど)は、特定の条件を満たすことにより3独占することができます。ただ、一定期間独占を許したとしても、いずれは万人が自由に使えるようにする必要があります。そうしないと産業や文化の発展の邪魔になるからです。

なので創作物に法が独占を認める場合、特許であれば「出願から20年」、著作権であれば「著作者の亡くなった日から50年」という存続期間が必ず設けられています。存続期間を満了した創作物は誰でも自由に使えるものとして開放されます4

商標は信用がある限り永久に保護する必要

一方、商標制度は商標を使用する者の信用(=ブランド)を保護するための制度であり、商標に信用が生じている限りは永久に保護する必要があります。例えば自動車の「トヨタ」という商標が「トヨタ自動車」を示すものとして一大ブランドを築き上げているにもかかわらず「今日で期限切れです。今日から誰でもトヨタって名乗って自動車作っていいですよ」となってしまったら大変なことになります。

本来開放すべきものが永久に保護される危険性

上で述べたように、永久に保護される商標に創作性を認めてしまうと、本来自由に開放されるべき創作物を永久に保護することになる危険性があります。そのような不合理を防ぐため、日本の商標制度では商標は「創作物ではなく選択物」であるものとして、創作物の保護とは切り分けて考えられています。

具体的に説明すると、「被服」を指定商品として商標登録されたロゴであっても、Tシャツのデザインとしてロゴが大きく付されているようなものは商標的使用ではないとされ、第三者がそのようなTシャツを販売しても商標権の効力が及ばないと判断される可能性があります。これはTシャツのデザインという創作的な価値あるもの5が商標によって実質的に永久独占されてしまうのを防ぐ意味があります。

便乗商標とどう向き合うか

自分が創作したフレーズ、自分が広めたフレーズを他人に商標登録されるのが嫌なら自分が先に商標登録をするのが一番簡単な方法です。

一方、今日においては著名フレーズに便乗して商標登録することは一般的にはブランドイメージを下げることに繋がりますので、ブランドを保護するという商標制度の本質的な意味から考えればあまり有効な手段とは言えません。

ですが、現実には日本の商標制度においては一般に考えられているよりも規制が緩く規定されています。便乗した企業をどのような目で見るかは、社会の自由な判断に委ねられているということではないでしょうか。

  1. 一方、「白い恋人」のパロディ商品として販売された【面白い恋人】は登録が認められませんでしたので、ケースバイケースです。
  2. 実際にはロゴやキャッチフレーズに著作権の前提となる著作物性が認められるかどうかは微妙なところではあります。
  3. 特許を取得する、著作権法上の著作物に該当する、など。
  4. 青空文庫、パブリックドメインDVDなど。
  5. 換言すればいずれ万人に開放されるべきもの。

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